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なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか?

ある日、「乳癌の手術でカラダの一部がなくなる前に元気な姿を残しておきたい」という依頼が届きました。撮影当日、堂々とレンズの前に立つ彼女は美しく、撮影終了後には「やっと前に向けそうです」と笑顔に。そのとき「いまの自分の写真は、これから生きて行くためのチカラになる」と感じたのです。実は彼女の撮影がきっかけで検査を受け、私自身にも乳がんが見つかりました。幸い、初期だったので大事にいたりませんでしたが、手術を受ける女性の不安が理解できたように思います。その経験から、自分にできることを考え、「乳がんの手術を受ける女性に、今の写真を残すことでこれからの力が与えられたら」とこのプロジェクトを立ち上げました。

​Photographer ​中山 英理子

Their Stories

​このプロジェクトを立ち上げるきっかけになったストーリー

story_A ある日、一通のメールが届きました…

来月初めに乳癌の手術をします。

慣れ親しんだ体の一部がなくなる前に、元気な姿を残したいと思いますが、撮っていただけますでしょうか?

急に色々な事が進んでしまい、なかなか気持ちが追いついてない状態ですが、今は手術に向けて準備をしているところです。

上手く言えないのですが、自分の気持ちを前に進めるために、写真に撮って収めておきたいと思いました。

女性の写真家の方に撮ってもらいたいと思い調べていましたら、中山さんのお名前を知り思い切って連絡しました。

短い文章から私にメールをする事がとても思い切ってされたのだという気持ちが伝わりました。

「48人の女性プロフォトグラファー写真展」で女性のセミヌードを出展しました。「 私という存在の中で身体はほんの一部に過ぎない」というサブテーマです。

その一部がもし失われるとしたら・・・想像すらしませんでした。

もちろん、「撮影します!」とお返事しましたがとても悩みました。

貴重な二度と戻れない一瞬を請け負うことになるのです。

 

どう向き合えばいいのか?

どんなイメージ、ライティングで撮影すればいいのか?

 

撮影本番日ご本人に初めてお会いして撮影前にいろいろお話を伺いました。

健康診断で疑いがあり検査に言った先の先生が見つけることができず半年が過ぎ、そしてリンパまでの摘出手術になってしまったこと。

後悔と不安で数ヶ月過ごし自分の気持ちを前に進めるために写真に残そうと思い、ネットで私を見つけてくれたことなど…。

 

女性は誰もが乳がんになる可能性はあります。それも高い確率で。でも、当事者にならないかぎりこの苦しみは理解できないのではないでしょうか。

ヌード撮影はとてもむずかしいものです。

裸である事が重要ではなく裸であってもその人が表現できるか?

美しく写るか? イヤラシくならないか?

 

レンズの前に立たれたときにそんな心配は一切吹き飛びました。

ここに来られるまでの覚悟で凛としたオーラーがいっぱいでした。

story_B またある日には、違う女性から連絡が…

(前略)乳がん診断後はあわただしい時間を過ごしていましたが、ある程度病気の進行状況が判明してくると、いよいよ手術が現実味を帯びてきました。「全摘出」か「部分切除」かの判断を迫られ、「部分切除」の場合は胸のカタチが大きく変わる可能性があること、前面に大きな傷が残ることについて医師から説明を受けました。そのため、「せめて今の状態を写真として残しておきたい!」との気持ちから写真に残すことを決めました。

しかし、撮影するとは決めたものの、誰に、どのように依頼をすればいいのか? わかりませんでした。自分自身で撮影することも検討しましたが、やはりプロの方にきれいな写真を撮ってもらいたいという気持ちが強くあります。ネットで検索してみても「乳がん手術前写真」を専門にしているフォトグラファーやヌード撮影を専門としている写真館もそれほど多くありません。個別にスタジオ撮影をされている女性フォトグラファーの方へお願いしたいと考え、中山さんへご連絡しました。

そして、撮影後には…

撮影前は、スタッフの方々の前で服を脱ぐことや撮影すること自体に迷いや不安もありました。でも実際の撮影現場は女性ばかりで楽しい会話もあり、緊張はしていましたが抵抗なく撮影に臨むことができました。

手術前の姿を写真に残すことができたことにより、手術により胸の一部を失うこと、大きな傷が残ることへの不安や憂鬱な気持ちが幾分和らいだように思います。当然のことではありますが、「手術後に写真に残しておけばよかった…」と後悔しても時間を戻すことはできません。また、もし撮影した写真を見ることに抵抗があれば「見なければいいだけ」だと思います。

 

やはりプロの方が撮影した写真はとてもきれいで、そのように記録に残すことができ本当によかったと思います。今回撮影をしてよかったともっとも強く感じた瞬間は、手術後に変わってしまった胸を見たときです。今後、同じように乳がんに罹患された方が後悔することなく前向きに治療に取り組むためのひとつの選択として「乳がん手術前撮影」をハードルなく実施することができるようになればいいなと感じています。

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